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ECUとは?ECUの開発・設計の委託における注意点

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現代の自動車には、安全性能や快適性能、環境性能を高めるために、数多くの電子制御システムが搭載されています。これらのシステムの中枢を担っているのがECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)です。本記事では、自動車の進化に不可欠なECUの役割と必要性、そしてその開発・設計を外部に委託する際に注意すべき点について解説します。

ECUとは?車両のあらゆるシステムを制御する頭脳

車載ECUとは、自動車に搭載された各種センサーからの情報を受け取り、あらかじめプログラムされた制御ロジックに基づいて、エンジン、ブレーキ、ステアリング、ライト、ドア、エアバッグ、オーディオ、ナビゲーションシステムなど、車両のあらゆるシステムを電子的に制御するコンピューターの総称です。

かつて「ECU」という言葉は、主にEngine Control Unit(エンジンコントロールユニット)、つまりエンジン制御を行う電子制御ユニットを指すことが一般的でした。しかし、自動車の高機能化に伴い、制御対象はエンジンにとどまらず、車両全体の多岐にわたるシステムへと拡大。現在では、SAE(自動車技術者協会)やISO(国際標準化機構)で定義されている**ECM(Engine Control Module)というエンジン制御ユニットの名称がある一方で、車両全体の制御ユニットを指す総称としてElectronic Control Unit(ECU)という用語が広く用いられています。

驚くべきことに、現在市販されている自動車には平均して100個以上ものECUが搭載されており、ハイブリッド車や電気自動車といった次世代自動車においては、その数はさらに増加傾向にあります。まさにECUは、現代の自動車にとって必要不可欠な存在と言えるでしょう。

ECUの必要性:より安全で快適、そして環境に優しい自動車のために

自動車にECUが搭載される目的は多岐にわたりますが、主なものとしては以下の点が挙げられます。

エンジン性能の向上

 燃料噴射量や点火時期などを最適に制御することで、エンジンの出力向上、燃費の低減、排出ガスのクリーン化を実現します。

運転性の向上(ドライバビリティ)

アクセルやブレーキ操作に対する応答性を高め、スムーズで快適な運転を提供します。

安全性の向上

ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)、エアバッグシステム、横滑り防止装置(ESC)など、事故を未然に防いだり、被害を軽減したりするための安全機能をECUが制御します。

快適性の向上

カーナビゲーション、オーディオシステム、エアコン、パワーウィンドウ、キーレスエントリーなど、乗員の快適性を高める機能もECUによって制御されています。

先進運転支援システム(ADAS)の実現

自動ブレーキ、車線逸脱警報、アダプティブクルーズコントロールなど、将来の自動運転技術に繋がる先進的な運転支援機能は、高性能なECUによって支えられています。

このように、ECUは現代の自動車において、安全性、快適性、環境性能といったあらゆる面で重要な役割を果たしており、今後の自動車技術の発展においてもその重要性は増すばかりです。特に、コネクテッド、自動化、電動化といった自動車業界の大きな変革期において、ECUはまさにその中核となる技術と言えるでしょう。将来的には、複数のECUを統合し、より効率的な処理を実現する「統合ECU」への期待も高まっています。

ECUの開発・設計委託における注意点

高度化・複雑化する車載ECUの開発・設計を外部の専門企業に委託することは、自動車メーカーにとって効率的な手段となり得ます。しかし、委託先を選定し、プロジェクトを進めるにあたっては、いくつかの重要な注意点があります。

1. 委託先の技術力と実績の確認

ECUの開発・設計には、高度な専門知識と経験が不可欠です。委託先の企業が、自動車業界におけるECU開発の実績を十分に持っているか、特に自社の開発したいECUの種類や機能に関する知識や経験が豊富であるかを確認することが重要です。過去の開発事例や技術者のスキルなどを参考に評価しましょう。

2. セキュリティ対策の確認

車載ECUは、車両の重要な制御を行うため、サイバー攻撃のリスクに常に晒されています。委託先が、開発段階からセキュリティ対策を十分に考慮した設計を行えるか、最新のセキュリティ技術や標準規格に対応しているかを確認する必要があります。脆弱性対策や暗号化技術、不正アクセス防止策など、具体的な対策について確認しましょう。

3. 品質保証体制の確認

自動車部品、特にECUは、高い信頼性と耐久性が求められます。委託先が、自動車業界の品質基準(ISO 26262など)に準拠した開発プロセスと品質保証体制を確立しているかを確認することが重要です。設計レビュー、テスト計画、品質管理体制など、具体的な品質保証の取り組みについて確認しましょう。

4. コミュニケーションと連携体制の確認

ECUの開発・設計は、委託先との密な連携が不可欠です。プロジェクトの進捗状況や課題を共有するためのコミュニケーション体制、設計変更やトラブル発生時の対応プロセスなどを事前に明確にしておくことが重要です。円滑なコミュニケーションを確保するための担当窓口や会議体などを設定しましょう。

5. 知的財産権の取り扱い

開発されたECUに関する知的財産権の帰属や取り扱いについて、契約締結時に明確に合意しておく必要があります。特許権、著作権、ノウハウなど、どの範囲の知的財産権がどちらに帰属するのか、将来的な利用範囲なども含めて 明確に協議しましょう。

6. 開発プロセスと進捗管理

ECUの開発は、複数の段階を経て行われる複雑なプロセスです。委託先が、明確な開発プロセスを持ち、進捗状況を適切に管理できる体制を構築しているかを確認する必要があります。プロジェクト管理ツールや報告体制などを確認し、透明性の高い開発を進められるようにしましょう。

7. 法規制と業界標準への対応

自動車業界には、安全性や環境に関する様々な法規制や業界標準が存在します。委託先が、これらの法規制や標準を正確に理解し、対応した開発・設計を行えるかを確認する必要があります。最新の法規制や標準に関する知識、認証取得の経験などを確認しましょう。

ECUの開発・設計事例

当社がECUの開発・設計を承った実績の一部をご紹介します。

ECUのリバースエンジニアリング

当事例では、「15年前に量産を行っていたECUを再度量産したいが、金型等を全て破棄しており対応してくれる先がない…」とお客様は非常にお困りで、幅広い電子機器ユニット関連のリバースエンジニアリングの実績がある当社にご相談いただきました。そこで、残っていた過去の基板図・部品表・検査情報と現品のみから量産化の検討を進めました。

まず、過去の部品表を基に部品を再検討しました。EOL品も多数あったためコンパチ品を含めて模索し、部品変更を行いながら再設計を行いました。また、パターン図などがなく、現品を細かく把握する必要があったため・・・

事例詳細はこちら

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