開発・設計 豆知識
基板・ボードのコピー・リバースエンジニアリングの種類
- 回路・基板設計
基板や電子機器の設計図がない状態から、元の製品の構造や機能を解析・再現する技術として基板のコピー・リバースエンジニアリングが注目されています。この技術は、製品の修理や改良、そして製造中止になった古い製品の再生など、さまざまな目的で活用されています。
この記事では、基板やボードにおけるリバースエンジニアリングの正しい意味と、その手法を3つの種類に分けて解説していきます。
基板・ボードのコピー・リバースエンジニアリングとは?
基板やボードのコピーやリバースエンジニアリングとは、完成した製品を分解・解析し、その構造や仕組み、機能などを調査・分析して、元になった設計情報(回路図や部品リストなど)を読み解く技術のことです。
厳密には、リバースエンジニアリングは、単なるコピーとは異なります。もちろん、解析によって得られた情報を使って全く同じものを製造する「デッドコピー」もその一種ですが、本来の目的は、製品の動作原理を理解し、その技術を応用したり、さらに良い製品を作るための情報を得ることです。これは、開発者が製品の課題を解決したり、品質を向上させたりする上で非常に重要なプロセスです。
基板・ボードのコピー・リバースエンジニアリングの種類
基板・ボードのリバースエンジニアリングは、その目的によっていくつかの種類に分けられます。ここでは、主な3つの目的について詳しく解説します。
①回路図化
1つ目の目的は、回路図化です。これは、実際の基板を観察し、部品の配置や配線をトレースして、元の回路図を再現するものです。基板上にある部品一つひとつの種類、定数、そしてそれらがどのように配線されているかを丁寧に調査していきます。
回路図が手元にない場合でも、この手法を用いることで、製品の動作原理を深く理解することが可能になります。この手法は、基板を再製作するという目的よりも、基板の詳細情報を把握するために用いられることが多いです。
②デッドコピー
2つ目の目的は、デッドコピーです。これは、リバースエンジニアリングによって得られた回路情報や部品情報をもとに、全く同様の製品を複製する手法です。
デッドコピーは、部品が製造中止となったり、市場から入手困難になった場合、同一の基板を新たに製造する必要がある場合に用いられます。この手法を用いることで、元の性能を維持した製品を作り出すことが可能です。
ただし、知的財産権の問題に触れる可能性があるため、法的な観点からも慎重な判断が求められます。また、知的財産権の問題を回避するために、後述する「③再設計・最適化」の手法をとるケースもあります。
③再設計・最適化
3つ目の目的は、再設計・最適化です。これは、リバースエンジニアリングによって解析した情報を利用し、元の設計をベースに、より優れた製品へと改良する手法です。
例えば、より高性能な最新の部品に置き換えたり、製造コストを削減するために基板のレイアウトを最適化したりします。この手法は、製品の機能を向上させたり、小型化・軽量化を図ったり、より効率的な生産プロセスを確立したりする目的で活用されます。単なる複製に留まらず、新たな価値を生み出すための「攻めのリバースエンジニアリング」と言えるでしょう。
基板・ボードのコピー・リバースエンジニアリングの事例
当社がリバースエンジニアリングに対応した実績の一部をご紹介します。
ECUのリバースエンジニアリング

当事例では、「15年前に量産を行っていたECUを再度量産したいが、金型等を全て破棄しており対応してくれる先がない…」とお客様は非常にお困りで、幅広い電子機器ユニット関連のリバースエンジニアリングの実績がある当社にご相談いただきました。そこで、残っていた過去の基板図・部品表・検査情報と現品のみから量産化の検討を進めました。
まず、過去の部品表を基に部品を再検討しました。EOL品も多数あったためコンパチ品を含めて模索し、部品変更を行いながら再設計を行いました。また、パターン図などがなく、現品を細かく把握する必要があったため・・・
基板・ボードのコピー・リバースエンジニアリングの種類の開発・設計ならお任せください
リバースエンジニアリングは、単なるコピーではなく、製品の技術を深く理解し、さらなるイノベーションにつなげるための重要な手段です。電子機器 受託開発・製造センター.comを運営するSST設計開発センターでは、最適なリバースエンジニアリングの手法の提案はもちろん、部品調達などのサポートなど一貫して対応します。また、知的財産権についてのお悩み等もございましたら、お気軽にご相談ください。
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