開発・設計 豆知識
コストダウンを考慮した電子部品選定の5つのポイント
- 回路・基板設計
電子機器開発において、コストダウンは製品の市場競争力を左右する永遠のテーマです。そして、その製品原価の大部分を占める1つが「電子部品コスト」です。しかし、単純に単価の安い部品を選べば良いというわけではありません。安易な選定は、かえって品質の低下や後工程での手戻りを招き、トータルコストを押し上げる結果になりかねません。
例えば、コストダウンに直結する方法として「部品点数の削減(集積化)」などの施策が考えられますが、部品そのもののコストが下がるものデメリットが存在します。例えば、難易度の高度化による開発費用の高騰・中長期的な部品代替問題の懸念などが挙げられます。
真のコストダウンとは、設計の初期段階から、購買、製造、さらには市場投入後のライフサイクルまでを見据えた部品選定を行うことです。当記事では、目先の単価だけでなく、製品ライフサイクル全体でのトータルコスト(TCO)を削減するための、5つの具体的な選定ポイントを解説します。
ポイント1:汎用部品・標準部品を活用する
設計の初期段階で最も効果的なコストダウン手法が、汎用部品・標準部品を積極的に採用することです。特定の機能しか持たない特殊な部品やカスタムICは、可能な限り避けましょう。
メリット
- 安価: 大量生産されており、市場に広く流通しているため単価が安い。
- 入手性: 多くの商社・代理店が在庫を持っており、調達しやすい。
- 品質安定: 長年の使用実績があり、品質が安定している。
特に、抵抗、コンデンサ、インダクタといった受動部品や、標準的なトランジスタ、ロジックICなどは、メーカーを固定せず、複数の選択肢を持てるように設計することが基本です。
ポイント2:オーバースペックを避ける「最適仕様」の見極め
高性能・高精度な部品は、当然ながら高価です。回路の要求仕様を正確に把握し、過剰な性能(オーバースペック)を持つ部品を選ばないことが重要です。
チェック項目例
- 精度・許容差: 「念のため」で高精度な部品を選んでいないか? 5%の抵抗で十分な箇所に、高価な1%品を使っていないか?
- 温度特性: 一般民生品レベルの温度範囲で十分な箇所に、高価な広温度範囲品(車載グレードなど)を選んでいないか?
- 各種定格: 電圧、電流、電力などの定格に、過剰なマージンを乗せていないか?
もちろん、信頼性を担保するための適切なマージン設計は必要ですが、その「適切さ」を設計者自身が深く理解し、必要十分なスペックを見極める力が求められます。
ポイント3: 長期供給性を考慮したメーカー・型番を選ぶ
コストが安くても供給終了(EOL)リスクがある部品は将来的な設計変更コストを招きます。市場で広く使われているロングライフ部品や、安定したメーカーが提供し長期供給を保証しているシリーズを選ぶことで、トータルコストを抑えられます。
EOL(End of Life:生産終了)は、製品のライフサイクルを脅かす大きなリスクです。量産開始後に主要部品がEOLになると、代替品の探索、評価、設計変更、再認証といった膨大なコストと工数が発生します。
対策
- 実績のある部品の選定: 市場で広く使われているロングライフ部品
- メーカーの選定:安定したメーカーが提供している部品
- サプライチェーンのしっかりしたメーカーが供給している部品を選
- 長期供給品を選ぶ: 部品メーカーが「長期供給」を前提としている、産業機器向けや車載向けの製品群から選定する。
- 新製品を避ける: 発表されたばかりの新製品は、将来的に仕様変更や統廃合が起こる可能性があるため、ある程度市場実績のある製品を選ぶ。
ポイント4:実装コスト・プロセスを意識したパッケージ選定
その部品を基板に「実装する」ためのコストも考慮する必要があります。
| 考慮点 | コストアップ要因 | コストダウンの方向性 |
| 実装方式 | 手実装が必要なDIP、スルーホール部品 | リフローはんだ付けが可能なSMD(表面実装部品)を選ぶ |
| 部品サイズ | 極端に小さい部品(例: 0402サイズ)→実装難易度が高く、不良率が上がる可能性 | 1005や1608サイズなど、一般的で実装しやすいサイズを選ぶ |
| パッケージ | 特殊な形状のパッケージ(QFN、BGAなど)→特殊な実装・検査装置が必要になる場合がある | 汎用的なパッケージ(SOP、SOTなど)を選ぶ |
設計者は、自社や委託先の製造ラインで、どのような部品が実装しやすいのか(あるいは実装しにくいのか)を把握し、製造部門と密に連携することが求められます。
ポイント5:部品単価以外のコスト削減
部品のコストは、単価だけではありません。
・在庫管理・購買コスト・輸送コスト
・部品実装後の追加費用
などが考えられます。
部品の在庫管理・購買コストの削減
同一メーカーや同一シリーズの部品で仕様違いを統一すると、在庫管理・購買コスト・輸送コスト削減にもつながります。
開発費用や認証費用などの削減
Wi-FiやBluetoothなどの無線通信機能を、認証取得済みのモジュール部品で実装する。自社でディスクリート部品から設計・認証取得するよりも、開発期間とコストを大幅に削減できます
まとめ
コストダウンを意識した電子部品選定は、単に安い部品を探す「購買活動」ではありません。それは、製品のコンセプト段階から、設計、購買、製造、品質保証の全部門が連携して取り組むべき「重要な行動」です。
特に、コストの大部分が決定づけられる設計の初期段階において、本記事で挙げた5つのポイントをいかに織り込むかが、プロジェクトの成否を分けると言っても過言ではありません。目先の単価に囚われず、製品ライフサイクル全体を見通した「賢い部品選定」こそが、市場で勝ち抜く製品を生み出すための強力な武器となるのです。
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