開発・設計 豆知識
IoT機器・システムの通信方式で注目されるLPWA(LoRa/Sigfox/LTE-M/NB-IoT)と選定方法
- IoT機器
IoT機器やシステムを開発するとき、意外と最初の関門になるのが「どの通信方式を使うか」という選定です。通信方式の選び方を誤ると、電池がすぐに切れてしまう、肝心の場所で電波が届かない、運用コストが想定と合わない——といった問題が、製品化のあとになって表面化します。しかも通信方式は製品の根幹に関わるため、後から変更するのは容易ではありません。
なかでもセンサー系のIoTで主役となるのが LPWA と呼ばれる通信方式です。本記事では、代表的なLPWAの4規格 LoRa/Sigfox/LTE-M/NB-IoT の違いを比較表で整理し、「自社の用途にはどれが最適か」を判断するための観点を解説します。
IoT機器の通信方式は大きく3タイプ
まず全体像を押さえましょう。IoT機器で使われる無線通信は、おおまかに次の3タイプに分けられます。
- 近距離系(BLE・Wi-Fi):通信距離は数m〜数十m。屋内やスマートフォン連携に向く
- セルラー系(4G/5G):高速・大容量だが、消費電力もコストも大きい。カメラ映像など大きなデータを扱う用途向け
- LPWA:低消費電力・広域・低速。少量のデータを長距離・長期間にわたって送るセンサーIoTに適した通信方式
なおLPWAはさらに、
・非セルラーLPWA(LoRaWAN、Sigfox)
・セルラーLPWA(LTE-M、NB-IoT)
に大別されます。
このうち、電池で数年動かしながら広いエリアをカバーしたいセンサー用途で注目されているのが、LPWAです。
なぜいまLPWAが注目されるのか
IoTのセンサー機器は、「広い範囲に多数を設置し、電池で長期間動かし、少量のデータをときどき送る」という使い方が大半です。高速・大容量のセルラー通信はオーバースペックで、消費電力もコストも見合いません。低消費電力・広域・低コストを実現するLPWAは、まさにこの用途のために生まれた通信方式だといえます。
LPWAとは:3つの特長とトレードオフ
LPWAは「Low Power Wide Area」の略で、次の3つを特長とします。
- 低消費電力 — 電池だけで数年間動作させられる
- 広域(長距離) — 数km〜十数kmの距離をカバーできる
- 低速・小容量 — 一度に送れるデータは少なく、通信速度も遅い
ここで重要なのが、3つめがトレードオフだという点です。LPWAは消費電力と通信距離に特化した代わりに、大量のデータは送れません。したがって、温度・湿度・水位・在庫・稼働状況などの少量のセンサーデータを定期的に送る用途には最適ですが、画像・音声・動画のような大きなデータを扱う用途には向きません。
代表的なLPWA 4規格の特徴
LPWAとひとくちに言っても、規格によって性格は大きく異なります。「免許の要る電波帯か」「ネットワークを自前で持てるか」「消費電力」「向く用途」を軸に、4つの代表規格を見ていきましょう。
LoRa(LoRaWAN)
LoRaはSemtech社が開発した無線変調方式で、LoRaWANはその上で動作するネットワーク規格です。LoRaWANでは企業や自治体がゲートウェイを設置し、キャリア網に依存しないプライベートネットワークを構築できます。
キャリア契約不要で、企業や自治体が独自にネットワークを構築・運用できることが大きな特長です。
長距離・低消費電力に優れ、工場・農場・大規模施設など、に向いています。
- 向く用途:工場・農場・敷地内など、私設ネットワークでまとまった範囲をカバーしたい場合
Sigfox
Sigfoxも免許不要の電波帯を使いますが、LoRaと違い、事業者が運営するネットワークを利用する方式です。
超低消費電力・超小容量・低料金が持ち味で、1回の送信で扱えるデータはごくわずか、送信回数にも上限があります。その代わりデバイス1台あたりの費用を非常に低く抑えられるため、「単純な状態通知やアラートを、安く・広いエリアで送りたい」という用途に向いています。
ただしSigfoxは通信事業者が提供するネットワークへの依存度が高く、利用可能エリアや今後のサービス提供状況を事前に確認しておくことが重要です。
- 向く用途:少量データの通知・アラートを、低コストで全国規模に送りたい場合
LTE-M(LTE Cat-M1)
LTE-Mは、携帯キャリアの免許帯域を使うセルラー系LPWAです。docomo・au・SoftBankといったキャリアの全国網をそのまま使えるため、基地局を自分で用意する必要がありません。
セルラーLPWAの中で比較的高速な通信が可能で、移動体通信時のハンドオーバーにも対応しています。ファームウェアのOTA(Over The Air)更新や双方向通信にも適しています。
- 向く用途:トラッカーなど移動するモノ、全国カバーが必要な用途、双方向のやり取りが必要な用途
NB-IoT
NB-IoTもキャリア網を使う方式ですが、性格はLTE-Mと対照的です。超低消費電力で、地下や屋内の奥まった場所など電波の届きにくい環境に強い一方、通信速度は非常に遅く、移動には弱いという特性を持ちます。
地下に埋設されたメーターのような、動かない・屋内深部にある固定センサーに向いています。
- 向く用途:地下・屋内深部に固定設置するメーター類など
【比較表】4規格を一覧で比較
ここまでの特徴を一覧で整理します。
| 規格 | 電波帯 | ネットワーク | カバーエリア | 消費電力 | 速度・容量 | 移動体 | 向く用途 |
| LoRa(LoRaWAN) | 免許不要(920MHz) | 自前で構築可 | 数km〜十数km | 非常に低い | 低速・小容量 | △ | 私設網・工場・農場・施設内 |
| Sigfox | 免許不要(920MHz) | 事業者網を利用 | 数km〜数十km | 極めて低い | 超小容量 | △ | 安価な通知・アラート、全国 |
| LTE-M | 免許帯域(キャリア) | キャリア網を利用 | キャリアサービスエリア | 中程度 | 比較的速い・低遅延 | ◎ | 移動体・トラッカー、双方向 |
| NB-IoT | 免許帯域(キャリア) | キャリア網を利用 | キャリアサービスエリア | 非常に低い | 超低速 | × | 地下・屋内の固定メーター類 |
用途・条件別の選び方
それでは、自社の製品にはどれを選べばよいのか。代表的なケースから当てはめてみましょう。
- 自前のネットワークを敷きたい(工場・農場・敷地内)→ LoRa(LoRaWAN) 決まった範囲を自分で管理でき、毎月の通信料を抑えられます。
- とにかく安く、少データを全国で送りたい → Sigfox 単純な通知・アラート用途で、デバイス費用を最小化したい場合に。
- 移動するモノを追いたい・全国カバーが必要 → LTE-M トラッカーや、双方向のやり取りが必要な用途に。
- 地下・屋内深部の固定センサー → NB-IoT 動かないメーター類などで、電波の届きにくい場所に設置する場合に。
選定で見るべき6つの観点
実際の選定では、次の6点を整理すると判断しやすくなります。
- 通信距離 — 設置場所と、基地局/ゲートウェイの位置関係
- 1回あたりのデータ量 — 送るのは数バイトか、それ以上か
- 送信頻度 — 1日数回か、リアルタイムに近いか
- 電池寿命の目標 — 数か月か、数年か
- 設置環境 — 屋外/屋内/地下/移動するか
- コスト — 初期費用・月額・デバイス単価のバランス
この6点が決まれば、おのずと候補は絞り込めます。逆に、これらが曖昧なまま規格を決めてしまうと、後戻りできない失敗につながります。
通信方式を含めたIoT機器開発は当社にご相談ください
ここまで見てきたとおり、IoTの通信方式選定は、距離・データ量・電池寿命・設置環境・コストといった複数の条件を踏まえて判断する必要があり、製品の根幹を左右します。
「電子機器ユニット 受託開発・製造センター」では、通信方式の選定から、回路設計・基板設計、ファームウェア開発、電源・省電力設計、筐体、そして量産まで、IoT機器の開発をワンストップでご支援しています。
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