開発・設計 豆知識
共晶はんだ(有鉛はんだ)と鉛フリーはんだの違いとは?それぞれの特性を解説!
- 製造・組立
プリント基板への電子部品実装において、部品同士を電気的に接続するために用いられる「はんだ」。古くから使用されてきた「共晶はんだ(有鉛はんだ)」と、近年環境への配慮から普及が進んでいる「鉛フリーはんだ」は、それぞれ異なる特性を持っています。
この記事では、基板実装における共晶はんだ(有鉛はんだ)と鉛フリーはんだの違いに焦点を当て、それぞれの特性、メリット・デメリット、そして用途について詳しく解説いたします。最適なはんだ材の選択は、製品の信頼性や環境負荷に大きく影響します。ぜひ、この記事を参考に、貴社の基板実装におけるはんだ材選びにお役立てください。

基板実装とは?
基板実装とは、プリント基板(PCB)上に様々な電子部品を配置し、はんだ付けによって電気的に接続する一連の工程です。この工程は、電子機器が正常に機能するために不可欠であり、使用するはんだ材の種類は、接合の信頼性や製品の寿命に大きく影響します。
共晶はんだとは?
共晶はんだとは、錫(Sn)と鉛(Pb)の特定の割合(一般的にSn:63% / Pb:37%)で構成された合金はんだのことです。この組成比率の合金は、融点が最も低く(約183℃)、凝固範囲が狭いため、共晶点と呼ばれる特性を持ちます。
共晶はんだの特性
- 低い融点: 約183℃という比較的低い融点のため、はんだ付け時の部品への熱負荷を軽減できます。
- 良好な濡れ性: 溶融したはんだが接合面に広がりやすく、均一で強固な接合を形成しやすい特性を持ちます。
- 優れた機械的強度: はんだ接合部の信頼性が高く、経年変化による劣化が少ないとされています。
- 容易な作業性: 長年の使用実績があり、作業者にとって扱いやすいはんだ材です。
共晶はんだの用途例
- 信頼性が重視される電子機器
- 長期間の使用が求められる製品
- 航空宇宙、医療機器など、高い品質基準が要求される分野
鉛フリーはんだとは?
鉛フリーはんだとは、その名の通り、鉛(Pb)を含まないはんだ材の総称です。環境保護意識の高まりから、RoHS指令(特定有害物質使用制限指令)などにより、電子機器への鉛の使用が制限されるようになり、鉛フリーはんだの開発と普及が進みました。
主な鉛フリーはんだの組成
- 錫(Sn)-銅(Cu)系
- 錫(Sn)-銀(Ag)-銅(Cu)系
- 錫(Sn)-ビスマス(Bi)系
など、様々な合金組成が存在します。
鉛フリーはんだの特性
- 高い融点: 一般的に共晶はんだよりも融点が高く(約217℃~227℃程度)、はんだ付け時の温度管理が重要になります。
- 濡れ性の課題: 共晶はんだと比較して濡れ性が劣る場合があり、接合不良のリスクが高まる可能性があります。
- 機械的強度の違い: 合金組成によって機械的強度や耐衝撃性が異なり、選定が重要です。
- ウィスカの発生リスク: 特定の鉛フリーはんだ合金では、ウィスカ(金属の針状結晶)が発生するリスクが指摘されています。
鉛フリーはんだの用途
- RoHS指令に対応する必要がある電子機器
- 環境負荷低減を目指す製品
- 幅広い民生用電子機器
共晶はんだと鉛フリーはんだの比較
共晶はんだと鉛フリーはんだは、それぞれ異なる特性を持ち、用途に応じて適切なはんだ材を選択することが重要です。
比較項目 | 共晶はんだ(Sn-Pb) | 鉛フリーはんだ(Sn-Cu, Sn-Ag-Cuなど) |
主成分 | 錫(Sn)、鉛(Pb) | 錫(Sn)、銅(Cu)、銀(Ag)、ビスマス(Bi)など |
融点 | 約183℃ | 約217℃~227℃程度(合金組成による) |
濡れ性 | 良好 | 共晶はんだと比較して劣る場合がある |
機械的強度 | 信頼性が高い | 合金組成によって異なる、選定が重要 |
作業性 | 良好、長年の使用実績あり | 温度管理が重要、合金によっては作業性が異なる |
環境負荷 | 鉛による環境負荷が大きい | 鉛を含まないため環境負荷が小さい |
主な用途 | 高信頼性、長寿命が求められる分野 | RoHS指令対応、環境配慮型製品、幅広い民生用電子機器 |
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いかがでしょうか。今回は、共晶はんだと鉛フリーはんだの違いを解説しました。製品の用途、求められる信頼性、環境規制への対応などを総合的に考慮し、最適なはんだ材を選択することが重要です。
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