技術情報
中空構造・アンダーカットも加工できる3Dプリントによる複雑形状の設計限界
- 3Dプリンター
3Dプリンターでは、従来の加工方法では実現が難しかった中空構造やアンダーカット形状の設計が可能となりました。一方で、自由度が高い反面、設計上の制約や量産移行時の課題も存在します。本記事では、複雑形状設計の可能性と限界、そして設計段階で押さえるべきポイントについて解説します。
3Dプリントが実現する「複雑形状設計」とは
従来加工では難しかった形状の制約
従来の製造方法では、加工プロセスそのものが設計の自由度を大きく制限していました。
切削加工では、工具が物理的に到達できる範囲でしか加工ができないため、内側に入り込んだアンダーカット形状や閉じた中空構造の一体加工は困難です。結果として、複数工程や分割加工が前提となります。
射出成形においても、金型から製品を取り出すために抜き勾配が必須であり、アンダーカット形状はスライド機構などの複雑な金型構造を必要とします。これにより金型コストが大幅に増加し、設計自由度も制約されます。
このような背景から、従来は部品を分割し、後工程で組み立てる設計が一般的でした。しかし、これは組立工数の増加や品質ばらつきの要因となっていました。
3Dプリンターで中空構造・アンダーカット形状の加工ができることによるメリット
軽量化と強度最適化
3Dプリントでは、内部にラティス構造やトポロジー最適化を取り入れることで、必要な強度を確保しながら大幅な軽量化が可能です。これは特に航空機や自動車分野において、性能向上に直結する重要な要素となります。
部品点数削減によるコスト・品質向上
従来は複数部品で構成されていた構造を一体化できるため、ボルト締結や溶接などの工程が削減されます。これにより、組立コストの低減だけでなく、接合部の不具合リスクも低減し、品質の安定化につながります。
冷却・流体・機能統合設計
内部に複雑な流路を形成できるため、冷却性能や流体制御を最適化した設計が可能になります。例えば、金型のコンフォーマル冷却や、流体機器の効率改善など、従来では実現困難だった機能統合が可能になります。
3Dプリンターの設計段階で押さえるべきポイント
「造形前提設計(DfAM)」の重要性
3Dプリントを最大限活用するためには、「DfAM(Design for Additive Manufacturing)」の考え方が不可欠です。
従来設計の流用では、不要な肉厚や過剰な安全設計が残り、コスト増や造形不良の原因となります。3Dプリントでは、材料配置を最適化し、必要な部分にのみ強度を持たせる設計思想が求められます。また、積層方向による強度差や表面品質の違いなど、3Dプリント特有の特性を理解した設計が重要です。
サポート・後処理を考慮した形状設計
複雑形状が可能とはいえ、すべての形状が無制限に造形できるわけではありません。オーバーハング部にはサポート材が必要となる場合があり、これが後処理工数やコストに影響します。
そのため、サポート材を最小化する形状設計や、除去工具がアクセス可能な設計が求められます。特に内部構造の場合、サポート除去が不可能になるケースもあるため注意が必要です。
試作から量産への移行を見据えた設計
3Dプリントは試作に適した技術と認識されがちですが、近年では量産用途も拡大しています。ただし、コスト構造は従来加工とは大きく異なり、造形時間や材料費がコストに直結します。
そのため、初期段階から量産を見据えた設計を行うことが重要です。場合によっては、3Dプリントで試作を行い、量産は切削加工や射出成形に切り替えるなど、加工法のハイブリッド活用も有効です。
3Dプリンターの加工はSST設計開発センター株式会社にお任せください
今回は、3Dプリンターの複雑形状の設計限界についてご紹介しました。ワンストップ部品加工センターを運営するSST設計開発センター株式会社は、1,000社を超える加工ネットワークを活かし、様々なサイズ、形状の部品加工に対応しております。ぜひお気軽にご相談ください。
関連する技術情報
-
切削加工と3Dプリンタの違いについて徹底解説!
部品の加工方法である切削加工と3Dプリンターは双方小ロットの加工に適している加工方法です…
- 3Dプリンター
-
自動車から医療機器まで部品加工のコストダウンができる金属3Dプリンタとは
金属3Dプリンタは従来の切削加工等と比較して製造のコスト削減ができるなど様々なメリットが…
- 3Dプリンター
-
粉末造形と光造形の違い
3Dプリンターは3DCADで作成された設計データをもとに、スライスされた2次元の層を一層…
- 3Dプリンター
-
3Dプリンター(光造形・粉末造形)でシリコーンゴムを直接造形できる?
3Dプリンターで使用される材料は、目的や用途に応じて多岐にわたります。一般的な材料とし…
- 3Dプリンター
-
造形物の強度・剛性を向上させる3Dプリンター(光造形)の二次硬化とは
3Dプリンター(光造形)は複数ある3Dプリンターの造形方式の中の1つで、最も歴史のある造…
- 3Dプリンター
-
試作加工における3Dプリンター(光造形・粉体造形)と切削加工の比較
試作の内製化において活用される主な加工方法は、3Dプリンター(光造形・粉体造形)と切削加…
- 3Dプリンター
-
3Dプリンター(光造形・粉体造形)で使用される樹脂の種類
当記事では、3Dプリンター(光造形・粉体造形)で使用される樹脂材料の種類について詳しくま…
- 3Dプリンター
-
金属3Dプリンター試作サービス‐メリット・デメリット紹介‐
当記事では、金属3Dプリンター(光造形・粉体造形)による試作のメリットと題しまして、切削…
- 3Dプリンター
-
初期試作は3Dプリンター(光造形・粉体造形)!試作工法の使い分け
当記事では、最適な試作工法の使い分けと題しまして、3Dプリンター、切削加工、射出成形によ…
- 3Dプリンター
-
3Dプリンター(光造形・粉体造形)による試作のメリット
当記事では、3Dプリンター(光造形・粉体造形)による試作のメリットと題しまして、切削加工…
- 3Dプリンター